中性脂肪は体内に存在する脂質のひとつでエネルギーを体内に貯蓄する働きをもっています。中性脂肪はトリグリセリド・トリグリセライド・トリグリの頭文字からTGとも呼ばれています。トリグリセライドの語源はトリという数字の3を表す言葉とグリセロールを表すグリセライドをあわせてできた言葉です。中性脂肪はこのグリセロールに3つの脂肪酸が結合してできたもので、体内では安定した形で存在しエネルギーとして使われる時に再びグリセロールと脂肪酸に分かれます。脂肪酸はすぐに使えるエネルギー、中性脂肪は貯蔵用のエネルギーという役割があります。
皮下脂肪や内臓脂肪はそのほとんどが中性脂肪で体にとっては重要な役割を持っています。具体的には体温を保つ、内臓を守る、エネルギーのもとになるなど体にとっては、なくてはならない存在なのです。中性脂肪は必要ですが増えすぎると問題になります。
中性脂肪の主な役割
中性脂肪の主な役割は下記の3つになります。
【1】中性脂肪は寒さから身を守り、体温を一定に保つ役割
皮下脂肪があることで体温を外気の寒さから身を守り、体温を保つ働きがあります。体内の中性脂肪の量が少なくなれば、体温の調節などがうまくできなくなることがあります。
【2】中性脂肪は臓器を外部の衝撃から守る役割
中性脂肪はクッション材(衝撃緩和材)としての役割を持っていて、体が何かにぶつかっても、少ない衝撃であれば痛いだけで済むのは中性脂肪のおかげです。内臓など体内の重要な器官を衝撃から守る働きが中性脂肪にはあります。
【3】必要なエネルギー源としての役割
中性脂肪は人体の活動に必要なエネルギー源が、食事などを通して供給されないときのエネルギーのもとになります。エネルギー不足になると、中性脂肪は遊離脂肪酸という物質に分解され血液中に放出され、全身に運ばれて体内各部分の細胞が正常に活動するためのエネルギー源になります。
3大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)をエネルギーとしてみると下記になります。
炭水化物(糖質) | 4kcal |
---|---|
たんぱく質 | 4kcal |
脂質 | 9kcal |
表を見ると脂質は大変優れたエネルギー源です。
1キロカロリーは水1リットルの温度を1度上昇させるために必要なエネルギーです。わずか1キロカロリーの違いでもエネルギーで見るととても大きな数字になります。つまり、脂肪1gを燃やすためには、中性脂肪の場合、0度の水1リットルを9度にまで上昇させるだけのエネルギーを燃焼させなくてはいけません。
中性脂肪は脂肪とは違うの?コレステロールとの違いは?
人間の体内には4種類の脂肪が存在します。よく中性脂肪とコレステロールを一緒だと思うことがあるようですが、体内では全く別の役割をしています。脂肪=中性脂肪というわけではありません。
中性脂肪を含む体内に存在する4種類の脂肪
人の体内には下記の4つの脂肪があります。
- 中性脂肪
- 脂肪酸
- コレステロール
- リン脂質
以下が4つの脂肪の主な働きになります。
中性脂肪 | トリグリセライド(TG)ともいう。脂肪細胞の中に貯えられていて必要に応じ脂肪酸になり、エネルギーとして使われる |
---|---|
脂肪酸 | 生きていくための活動するために必要なエネルギーとして利用される |
コレステロール | 細胞膜の構成成分。ステロイドホルモンの材料、胆汁酸の材料にもなる |
リン脂質 | 細胞膜の構成成分。疎水性物質の親和性を保たせる |
中性脂肪とコレステロールの違いについて
脂肪には、脂肪酸、中性脂肪、コレステロール、リン脂質の4種類があり、コレステロールもその脂肪の一種になります。同じ脂肪でもコレステロールは私たちの体に約60兆個あるといわれている細胞の壁の材料であると同時に、種々のホルモンや胆汁酸の材料にもなっています。
コレステロールも中性脂肪と同じく体にとってなくてはならない存在なのですが、体に貯まりすぎると害になるといわれている物質です。
脂肪成分のそれぞれの役割の違いは、脂肪酸はすぐに使えるエネルギー、中性脂肪は貯蔵用のエネルギー、一方、同じ脂肪でもコレステロールは細胞の壁の材料であると同時に、種々のホルモンや胆汁酸の材料にもなっています。
高脂血症の診断基準
高脂血症とは、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症の4種類の疾患の総称です。疾患名称としては4種類ですが、タイプとしてはさらに6種類のタイプ中性脂肪と高脂血症の6つのパターンがあります。
高中性脂肪血症の基準値について
中性脂肪は、食後に測定した場合、その数値はあまり意味がありません。採血前日にアルコールを飲まずに12時間以上の絶食後に測定された値が150mg/dl以上の時、高中性脂肪(トリグリセライド)血症と診断されます。
中性脂肪の正常値は50~149mg/dlです。
中性脂肪値は食後、通常の2倍ほどの数値になり、6時間以内に元の状態に戻ります。中性脂肪値はかなり食事に左右される検査数値なので健診のときは十分に注意しましょう。
高脂血症と診断する基準値(単位はmg/dl)
高脂血症と診断する基準値(単位はmg/dl)
血清脂質 | 正常値 | 異常値 | 病名 |
---|---|---|---|
総コレステロール(TC) | 150~219 (境界域200~219) |
220以上 | 高コレステロール血症 |
LDLコレステロール | 70~139 (境界域120~139) |
140以上 | 高LDL血症 |
中性脂肪(TG) | 50~149 | 150以上 | 高中性脂肪血症 |
HDLコレステロール | 40以上 | 40未満 | 低HDL血症 |
上記の4つのうち一つでもあてはまれば高脂血症と診断されます。またLDLコレステロールか検査結果で出ていない場合は次の方程式で数値を求めてください。
LDLコレステロールの計算式
総コレステロール(TC)-HDL-中性脂肪(TG)×1/5=LDL