適度な飲酒は健康にとって有益です。血行を良くしたり、HDL(善玉)コレステロールを増やしたり、ストレスの解消になったり、疲労回復を助けてくれるなど、アルコールの効用は医学的にも認められています。アルコールが中性脂肪に良くないのはやはり飲み過ぎが原因となります。お酒を飲みすぎで中性脂肪の数値が高くなってしまった人は、少しお酒の量を減らしたり、休肝日をつくるなどして健康のためにも自分にとって適量を飲むようにしましょう。
飲みすぎる人は高中性脂肪血症や高コレステロール血症が多い
肝臓にたまる中性脂肪はアルコールからもつくられます。飲みすぎるとアルコールは肝臓で中性脂肪に合成され、血液中のVLDLが増加して、中性脂肪値が上昇します。飲みすぎる人は高中性脂肪血症や高コレステロール血症が多くなります。
お酒との付き合い方さえ間違わなければ、適度なお酒は健康にも良いので、健康的に何より美味しくお酒を飲み、長く楽しめるよう注意しておくべきことを紹介します。
飲み過ぎないように適度なアルコールの摂取量を把握する
個人差はありますが、一般的な男性のアルコールの適量は下記になります。
女性の適量は男性の約半分といわれています。
ビール | 大瓶1本(643ml) | 245kcal |
---|---|---|
日本酒 | 1合(180ml) | 215kcal |
焼酎 | 1合(180ml) | 254kcal |
ウィスキー | シングル2杯(60ml) | 150kcal |
ワイン | 2杯(160ml) | 160kcal |
お酒の適量を守るのはなかなか難しいですが、もし飲みすぎてしまったら水分を多く取ると、アルコールが尿と一緒に排泄されます。十分に水分を取って、脱水による血液の濃縮を防ぐ事が大事です。また緑茶を多めにとることで、お茶の利尿作用でアルコールの排出を促すことができます。
お酒の時のつまみ、飲酒後の食事に気をつける
中性脂肪を下げるためにはお酒のつまみは脂肪の少ない食材を選んで食べるようにします。できれば飲酒後は食べることは避けたほうが賢明です。アルコールの影響で中性脂肪の合成が促進されているところへ、中性脂肪の元となる糖質や脂質を送り込むというのは中性脂肪を爆発的に増やすことにつながります。飲酒後の糖質の摂取は中性脂肪値を急上昇させてしまうのです。お酒と相性に良いラーメンなどは糖質に加えて脂質の多いので飲酒後に食べるのはかなり良くない習慣なので、できれば飲酒後の糖質摂取は控えるようにしましょう。
また空腹時の1杯をやめることも重要です。仕事終わりでお腹の空いた状態でビールなどを飲むと最高に美味しいものですが、胃腸にも良くありません。飲む前に少し食べ物を口にして胃腸を慣れさせてあげることで体への負担を少なくしてあげることが重要です。
中性脂肪を増やさないためにオススメのお酒のおつまみ
大豆食品 | 冷奴・湯豆腐・枝豆・納豆 |
---|---|
刺身 | まぐろ・青背の魚・白身の魚・魚介類 |
野菜 | おひたし・煮物・野菜スティック |
酢の物 | きゅうり・くらげ・わかめ・もずく |
焼き魚 | さば・あじ |
中性脂肪のためには揚げ物はできれば避けましょう。どうしても食べたい場合は天ぷらやフライは避けて、素揚げや唐揚げの方が若干カロリーを抑えることができます。食事は基本的に油を使わないようにしてドレッシングやマヨネーズなども使わないようにしましょう。
高血圧とアルコールの関係
一般的に高血圧の治療では、アルコールの摂取制限が生活習慣改善の方法として広くすすめられています。実際、アルコールと血圧の関係について調べた過去の研究のほとんどで、習慣的にお酒を飲む人は、お酒を飲まない人に比べて、高血圧の頻度が高いことが示されています。また大量、長期の飲酒は不整脈を誘発し、心臓肥大や心不全の原因になることも知られています。
アルコールは血圧を上げることも下げることもある
アルコールが心臓や血管系に及ぼす作用は、それほど単純ではなく血管を収縮させて血圧を上げることもあれば、逆に血管を拡張させて血圧を下げたり状況次第で違う効果がみられます。
適度の飲酒であればアルコールには、善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールを増やす作用があることが挙げられます。さらに、アルコールには血液を固まりにくくする働きもあります。大量の飲酒は医学的にも社会的にも問題がありますが、循環器病の予防という観点からみれば、少量のアルコールは体に良いということになります。肝機能が低下しているなど特別な理由がいのであれば、お酒を飲む人は適量を意識すれば、あえて禁酒する必要はないでしょう。
高血圧の人がお酒を飲むときは、男性は1日30ml以内(ビール大びん1本、または日本酒1合まで)、女性はその半分までにしましょう。また、お酒を飲むときは塩辛いつまみを食べることが多いのですが、血圧が高い人は、塩分制限の点からも特に注意が必要になります。アルコールはカロリーが高いということにも、気をつけなければいけません。高血圧の人には、ほどほどに飲むことをおすすめします。医学的には、時々大量に飲むより、平均して毎日少しづつ飲む方が体には良いようです。適度な飲酒と食事に気をつければ中性脂肪の数値も正常になることが期待できます。あと中性脂肪が気になるなら酒の肴は大豆、魚、鶏肉にするようにしましょう。
お酒を飲むときは大量の水分補給を意識する
アルコールをとると体はものすごい勢いで脱水していきます。アルコールティッシュでテーブルを拭いたときや、アルコール殺菌剤の速乾を目にしたことがあると思いますが、アルコールは脱水をすすめることになります。
お酒も水分なのになぜのどが渇くのか?
口から入ったアルコールは、胃や小腸で吸収され、血液に溶け込んで、まず肝臓に送られます。吸収されたアルコールは、肝臓でアルコール脱水素酵素(ADH)の働きによりアセトアルデヒドに分解され、さらにアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きで酸化され、酢酸に変わります。肝臓で分解しきれなかったアルコールは、肝静脈を通って心臓に送られ、ここから脳や全身へとめぐっていき、再び肝臓に戻ってきて分解されます。肝臓でできた酢酸は、全身をめぐるうちに水と炭酸ガスに分解され、最終的には体外に排出されます。
お酒を飲んで、のどが渇くのは、このアルコールの分解過程で脱水反応が起こるためです。お酒を飲みすぎて、そのまま寝てしまったりすると、翌朝すごくのどが渇くと思います。飲酒後喉が乾いた状態になると血液中の水分も低下し、非常に危険な状態になる場合もあるので、お酒を飲む時はできるだけ水分補給を意識するようにしましょう。通常、ビール1リットルに対して、尿の量は1.5リットル、つまり飲んだ量の1.5倍の水分が、短時間に尿として体外に排出されてしまうのです。お酒を飲むときは適時、できれば大量に水を飲むことをおすすめします。飲酒中に水を飲むと体が脱水しにくくなると同時に、適度にお腹が膨れるので飲み過ぎや食べ過ぎの予防にも効果的です。水分補給を意識して中性脂肪をためないようにしましょう。
ただ水のかわりに緑茶やウーロン茶ではどうかというと、お茶にはカフェインが含まれているので利尿作用があります。アルコールで脱水しているところに、利尿作用があるお茶の摂取は控えた方が良さそうです。水分補給は水にしましょう。中性脂肪を下げるためであればトクホ(特定保健用食品)のサントリーの黒烏龍茶とかであれば、中性脂肪の吸収も抑えられてます。中性脂肪の気になる方は、お酒は飲みたいけど体の状態は少し心配という方が多いと思うので、少しでも肝臓に負担のかからない飲み方を意識しましょう。そして中性脂肪の数値を考えるのであれば、お酒のつまみは白身魚や鶏肉、大豆製品などを選びましょう。
肝臓はよく人体の化学工場といわれています。人が生きていくうえで必要なエネルギーや物質をつくったり、不要となった物質を解毒するための代謝を行うからです。例えば、食物から取り込んだ脂肪酸を肝臓で人の利用できる型の中性脂肪に変え、血液を通じて全身に運び、エネルギー源としたり、各臓器の材料にします。逆に、全身の脂肪組織から血液中に放出された脂肪酸を取り込み、中性脂肪に変えて再利用します。このように、肝臓は食物から摂取する脂肪や、全身の脂肪組織から運ばれてくる脂肪、肝臓自身が合成する脂肪で、いつも脂肪まみれで働いているといえます。
また、アルコールを飲みすぎると、アルコールは肝臓で中性脂肪に合成され、血液中のVLDLが増えて、中性脂肪値が上昇します。肝臓での中性脂肪を合成するピーク時間は、アルコールを飲んでから約12時間後といわれています。そして、合成された中性脂肪が肝臓から血流に乗り、他の組織へ運び去られるまでには、さらに12時間かかるといわれています。摂取したアルコールは肝臓に最大24時間とどまることになります。
そしてアルコールと脂っこいおつまみは、普段から脂肪まみれで一生懸命働いている肝臓にとっては大きな負担となります。飲みの席でアルコール摂取を少なくすることはなかなか難しいと思います。アルコールの量が調整できない時はせめて食べ物に気を使って脂肪の少ないもので良質な高タンパクのもの、ビタミン・ミネラル・食物繊維の多い野菜や海草を選びましょう。特に白身魚や鶏肉、大豆製品などがおすすめです。
お酒のカロリーは高いので中性脂肪への影響は大きい
お酒のカロリーは総じて高いので中性脂肪の気になる方は注意が必要です。
アルコールの種類とカロリーを把握して過剰に摂取しないように気をつけましょう。
アルコール飲料100g当たりの成分
アルコールの種類 | カロリー(kcal) | アルコール濃度(%) |
---|---|---|
純米酒 | 103 | 15.4 |
ビール | 40 | 4.6 |
赤ワイン | 73 | 11.6 |
紹興酒 | 127 | 17.8 |
焼酎 | 206 | 35 |
ウイスキー | 237 | 40 |
人がお酒を飲んだ時に医学的には、アセトアルデヒドの血中濃度を0.3%程度、アルコールの血中濃度を0.1%程度にコントロールしておくとほろよい状態で、気持ちよくお酒を楽しむことができます。ほろ酔いといわれる適量を実現するためのお酒の楽しみ方としては、23グラムのアルコールを1単位として、合計2単位までに調整します。
1単位の目安
日本酒 | 1合 |
---|---|
ビール | 大瓶1本 |
ウィスキー | 水割りダブル1杯 |
ワイン | |
焼酎 | 水割りコップ1杯 |
お酒の飲みあわせと中性脂肪の関係について
肝臓に蓄積される中性脂肪は、アルコールからも合成されているので飲みすぎるとアルコールは、肝臓で中性脂肪に合成され、血液中のVLDLが増加し中性脂肪値が上昇します。お酒は高カロリーなので飲み合わせでチャンポンするから中性脂肪が上がるのではなく、飲みすぎてしまうことで中性脂肪が上がるということになります。居酒屋で飲んだ翌日は、食事に気を配りいつもより食べる量を少なくしたり、食べ物に気をつけ焼き魚等の軽い和食などにしてみる工夫も効果的です。
毎日お酒を飲む習慣のある人は、休肝日が週3日以上ある人に比べて死亡の危険性が最大で1.8倍に高まるそうです。
適量のアルコールには、HDL(善玉)コレステロールを増やす作用や血液を固まりにくくする作用もあるといわれ、お酒を飲むことで心筋梗塞などが減るという結果も出ていますが、肝炎などの他の病気のことを考えると、やはり飲み過ぎはには気をつけなければいけません。なみに1日5合を10年以上飲み続けると肝硬変になる確率が高くなるいわれています。
アルコールの代謝産物アセトアルデヒドは発がん物質
お酒を飲んだ翌日お酒臭い人と臭くない人がいると思います。アルコールの代謝産物はアセトアルデヒドですが、翌日のお酒臭さアルコールが残っていることが関係しています。お酒くさい人はお酒をアルコールからアセトアルデヒドに代謝しきれていないということです。代謝の鈍いお酒臭い人は、がんになりやすいという事実があります。
飲酒の翌日まで酒臭さが残りやすい人は、アセトアルデヒドが唾液の中に生じやすいということが、国立病院機構久里浜アルコール症センターの調べでわかったといいます。アセトアルデヒドは食道がんや咽頭がんに深く関係しているといわれています。WHOはアセトアルデヒドを継続して与えたラットに、咽頭がんが生じた動物実験などから、アセトアルデヒドを発がん物質と位置付けています。
アルコールを分解する酵素(ADH-1B)の働きが弱い人のアセトアルデヒド濃度は、正常な人の濃度に比べると大幅に上回ります。
口腔内にはアルコールを分解してアセトアルデヒドを作り出す細菌が生息していてアルコールを分解する酵素(ADH-1)の働きが弱い人は、口腔内にアルコールが長く残り酒臭さが翌日まで続きます。その間にこの細菌の働きで口の中にアセトアルデヒドが作られ続ける状態になってしまうことになります。
アルコールを分解する酵素(ADH-1)の働きが弱い人は、日本人の約7%といわれています。
飲酒前後の歯磨きやうがいなど、口の中をよく洗い、清潔にすることが、アセトアルデヒドを作り出す細菌を少なくし、がん予防につながるのではないかとも考えられるようです。お酒を飲んで、帰宅ししたらすぐに休みたい気持ちもありますが、必ず歯磨きやうがいをする習慣をつけましょう。