高脂血症は、内臓脂肪が増加することで起こるメタボリックシンドロームの要素の一つです。悪事は、いわゆる悪玉コレステロールを想像する場合が多いのですが、実は内臓脂肪と関係するのは、中性脂肪と善玉のHDLコレステロールなのです。食事から摂取した脂肪が内臓脂肪になり、その内臓脂肪が血中の中性脂肪をさらに増やしていくという悪循環が続いていくことになります。
脂肪は増えだすとどんどん増えていく
内臓脂肪は肝臓で、水に溶ける油になる
空腹になって、体がエネルギーを必要としたとき、脂肪細胞が遊離脂肪酸に分解され、肝臓に運ばれます。遊離脂肪酸は、肝臓で中性脂肪に合成されますが、油である中性脂肪は、そのままでは水分が主成分である血液に溶け込むことはできない状態です。血液に溶け込むために、たんぱく質などと結びついたVLDLという形になって、血液中に放出されます。ただし、VLDLはそのままの形ではエネルギーとして利用することができないため、脂肪細胞でつくられるリポたんぱくリパーゼという酵素により分解され、全身にコレステロールを供給するLDL(悪玉コレステロール)や、血管壁のコレステロールを除去するHDL(善玉コレステロール)がつくられます。
内臓脂肪が、過剰な油を血液中に放出していく
内臓脂肪が過剰にたまっている状態が続くと、肝臓に送られる遊離脂肪酸の量が増加し、VLDLの量も増加します。そしてリポたんぱくリパーゼの働きが低下するので、VLDLがうまく分解されず血液中にたまってしまいます。VLDLにはとても多くの中性脂肪が含まれているので、それだけで血液中の中性脂肪値が高くなってしまいます。
また、VLDLがうまく分解されないと、HDLも充分につくることができなくなります。このような流れで、内臓脂肪の蓄積は、中性脂肪が多く、HDLが少ないタイプの高脂血症を引き起こしてしまうのです。
中性脂肪と高脂血症の6つのパターン
高脂血症とは、ひとことでいえば血液中に、コレステロールや中性脂肪が異常に増えてしまった病気です。高脂血症にはそのタイプや中性脂肪、HDL(善玉コレステロール)、LDL(悪玉コレステロール)の数値によって6つのパターンに分けられています。高脂血症はサイレントキラー(沈黙の殺人者)とも呼ばれ、高脂血症の人は国内で約2,000万人以上と推定されています。
高脂血症はサイレントキラー(沈黙の殺人者)
高脂血症4つの診断名と6つのパターン
高脂血症とは、ひとことでいえば血液中に、コレステロールや中性脂肪が異常に増えてしまった病気ですが、実際は脂肪を運ぶリポタンパクの代謝異常になります。カイロミクロンなど5種類のリポタンパクのいずれか、もしくは複数が血液の中で増加することで発症します。
診断名としては、高脂血症には高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症の4つがあります。治療のためには、どのリポタンパクの影響を受け症状がでているのかを確かめる必要があります。それによって、根本的な原因を特定して行くことができます。増加するリポタンパクの種類や中性脂肪、HDL(善玉コレステロール)、LDL(悪玉コレステロール)の数値関係で6つに分けることができます。
高脂血症4つの診断名
- 高中性脂肪血症
- 高コレステロール血症
- 高LDLコレステロール血症
- 低HDLコレステロール血症
高脂血症6つのパターン
Ⅰ型 | 中性脂肪値が高い | 中性脂肪値が1000mg/dl以上 | カイロミクロンだけが増加 |
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Ⅴ型 | 中性脂肪値が1000mg/dl以上で総コレステロール値も高い | カイロミクロンとVLDLが増加 | |
Ⅳ型 | 中性脂肪値が150~1000mg/dl | VLDLだけが増加 | |
Ⅱb型 | 中性脂肪とLDLコレステロール値が高い | 総コレステロール値が220mg/dl以上で中性脂肪値が150~1000mg/dl | LDLとVLDLが増加 |
Ⅲ型 | IDLが増加 | ||
Ⅱa型 | LDLコレステロールが高い | 総コレステロール値が220mg/dl以上 | LDLだけが増加 |
どのパターンでも、次の要素が1つ、または複数重なっていることが確認することができます。
- 遺伝的な要素
- 糖尿病など他の病気による要素
- 食生活や運動習慣などの生活習慣による要素
- 服用している薬の影響
したがって、病院では、同様に次の項目をチェックします。
- 動脈硬化症や膵炎などの合併症があるか、あった場合の進行状況
- 高脂血症を引き起こす基礎疾患とその重症度
- 患者さんの生活習慣
- 服薬の有無
以上の要素を総合的に判断して、原因を特定し、治療方針を決定します。
中性脂肪と血管・血圧・血液ドロドロの関係
血管は年齢と共に壁が厚くなり、弾力性も失って硬くなります。また一般に血液ドロドロといわれる状態は、コレステロールや中性脂肪が高くなり血液の流れが悪くなる、あるいは動脈硬化によって血管内膜が傷つくことによって血が固まりやすい状態になることを言います。
血管は加齢により壁が厚くなり、弾力性も落ち、硬くなる
血液がドロドロとは、血液が流れにくくなる状態
血管は年齢と共に壁が厚くなり、弾力性も失って硬くなります。首筋にある直径約5~10mmの頚動脈の血管壁の厚さは40歳代で0.7mmほどですが、10年で0.1mm厚さが増すと言われています。
また、30歳ごろから血管の壁にカルシウムがくっつく石灰沈着が始まり、50歳を過ぎるころからは、血管を包み弾力性を保つ筋肉の細胞が減少していくと言う報告もあります。
血液がドロドロとは、何らかの理由で血液が流れにくくなる状態を言います。血液の粘度が上昇すると血液の流れは悪くなります。多血症や血液中のγ―グロブリンというたんぱく質が異常に多くなる疾患では極端にドロドロになります。
一般に血液ドロドロといわれる状態は、コレステロールや中性脂肪が高くなり血液の流れが悪くなる、あるいは動脈硬化によって血管内膜が傷つくことによって血が固まりやすい状態になることを言います。
その結果、心筋梗塞や脳梗塞といった血管が詰まってしまう病気に進展することがあります。血液の流れが悪いので当然、心臓はポンプ圧を引き上げますので高血圧という状態になります。
血栓症は血が固まりやすい状態
正常な状態では、血液が固まることはなく体内を循環していますが、いろいろな原因で血栓と呼ばれる固まりができることがあり、その血栓が出来る状態を血栓症といいます。
動脈硬化が進行すると血管の内側にある内膜という壁の下に酸化した悪玉コレステロールに起因するプラークと呼ばれるカスがたまっていきます。そしてそのプラークが破綻し、プラークを覆っていた内膜がはがれ落ち血栓の形成が発生します。
その他、血流が停滞したり乱れたりすると、脱水や他の原因で血液がドロドロ状態のになってしまうことも、血栓の形成にかかわる重要な要因となります。血液中の悪玉コレステロール、中性脂肪や血糖値が高い状態が続いてしまうと、赤血球の柔軟性がなくなっていき、血栓の核となる血小板が固まりやすい状態になってしまい血栓ができやすくなります。
肥満者(特に内臓脂肪蓄積型)では静脈血栓症や心筋梗塞などが起こりやすいことが知られています。 血栓を予防するには後のページで出てくる食事療法と運動療法を地道に実行していくしかありませんが、脱水の予防も大切になります。運動するときや暑いとき、就眠時などに脱水に近い状態になりやすく、血液が濃くなることで血栓ができやすくなります。脱水状態になりそうな時は早めの水分補給をしましょう。
また就眠前の水分補給は命の水とも呼ばれていて、就眠中の脳血管障害や心筋梗塞の予防にたいへん効果的と考えられていますので寝る前の1杯の水は習慣付けたいものです。(血栓についてはコレステロールこぼれ話の血栓とは?で詳しくご案内しています。)
中性脂肪と超悪玉コレステロール
超悪玉コレステロールの原因は、中性脂肪値が高い高中性脂肪血症にあります。中性脂肪値が高いと善玉コレステロールが減って、LDLの中でも超悪玉の小型LDL(スモールデンスLDL)が増えてしまうのです。LDLコレステロールのように血管に直接付着して動脈硬化を進めるわけではないが、中性脂肪は間接的に超悪玉コレステロールを増やす動脈硬化の黒幕的存在なのです。
超悪玉コレステロールの原因は、中性脂肪値が高い高中性脂肪血症
超悪玉LDLは粒子が小さいので細胞間を自由に潜り抜ける
中性脂肪値が高いと善玉コレステロールが減って、超悪玉の小型LDLが増えます。これが血管壁に入って酸化LDLになると、それを多く取り込んだ白血球が増えてプラーク(コレステロールなどが固まったもの)を作ります。そして、不安定なプラークが破裂して血小板や赤血球が心臓の冠状動脈を完全に詰まらせると、心筋梗塞が発症するのです。
また、LDLが血管の内膜などでフリーラジカルによって酸化された場合、酸化変性LDLとなりこれこそが超悪玉コレステロールの正体であると言う医師もいます。LDLコレステロールのように血管に直接付着して動脈硬化を進めるわけではないが、中性脂肪は間接的に超悪玉コレステロールを増やす動脈硬化の黒幕的存在なのです。
実際、高中性脂肪血症の人には、超悪玉コレステロールが多く出現し、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)の発症率が高いという報告もあるのです。健康診断でコレステロール値は異常なしと出ても、決して油断はできないのです。
中性脂肪値が高い人はもちろん、家族に狭心症や心筋梗塞を発症したことがある人は、病院で一度、超悪玉コレステロールのチェックを受けて、心筋梗塞のリスクを知っておいたほうが良いと思います。