中性脂肪とコレステロール

中性脂肪とコレステロールの関係

コレステロールは私たちの体に4種類ある脂肪の1つになります。4つの脂肪とは、脂肪酸、中性脂肪、コレステロール、リン脂質になります。私たちの体には合計約100gのコレステロールが常時存在しているといわれていて、脳に25g、筋肉に25g、血液中に10gくらいあり、副腎や肝臓、肺、神経細胞、動脈壁などの組織にもコレステロールは存在しています。コレステロール重要な脂肪で、1日あたり1~1.5gは必要だといわれています。コレステロールはよく中性脂肪と同じようなものと認識されます。ですが中性脂肪とコレステロールは持っている役割が違います。中性脂肪はエネルギーを貯蓄するという働きがあります。健康診断の検査結果ではコレステロールが低いのに、中性脂肪が高いということもあります。中性脂肪とコレステロールは同じ脂質ですが、持っている役割が違うので、中性脂肪の数値か高ければ、コレステロール数値が高くなるということでもありません。
ただ血液中に中性脂肪が増加することで、血液中の善玉コレステロールを減らしてしまうので、善玉コレステロールが減ると悪玉コレステロールが増えてしまいます。役割が全く違いますが、中性脂肪とコレステロールは密接に関係しているといえます。

コレステロールは、私たちの体に欠かせない物質

コレステロールは私たちの体にとって、なくなはならない大切な脂肪です。人間の体はおよそ60兆個の細胞で構成されていますが、コレステロールはその細胞の細胞膜をつくる材料なのです。また、男性ホルモンや女性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのホルモンや、脂肪の消化酵素であり肝臓で合成される胆汁酸の原料でもあるのです。つまり、コレステロールは、私たちの体に欠かせない物質であり、1日あたり1~1.5gは必要だといわれています。その20~30%は普段の食事で取り入れ、残りの70~80%は体内で毎日、新しく合成されているのです。
食物に由来するコレステロールも一旦は肝臓に集められ、貯蔵されますので、肝臓はコレステロールの合成基地であると同時に貯蔵基地でもあります。
ただし、ご存知のように、必要量を超えたコレステロールは、体にとって害を及ぼします。また男性の場合、30歳を過ぎた頃から中性脂肪値は急激に増加し、60歳ごろまでに20~30mg/dl増加します。コレステロールは年間に約1mg/dlの増加があるといわれています。一方、女性はどちらも閉経後に急激に増加します。

コレステロールはどこに溜まるの?

余分なコレステロールは動脈壁に付着してしまう

必要量を超えた、体にとって余分なコレステロールは、中性脂肪のように脂肪組織に溜まっているのではなく、血液の中を常に移動しています。体内に入った余分なコレステロールはほとんど体外に排出されずに、最終的には動脈壁に付着することで処理されるしかありません。ですがコレステロールは脂肪のひとつなので、水には溶けずに、ほとんどは脂質と蛋白が一緒になった可溶性のリポたんぱくという状態で存在しています。
このリポたんぱくを超遠心法により分離しますと、カイロミクロン、超低比重リポ蛋白(VLDL)、低比重リポ蛋白(LDL)、高比重リポ蛋白(HDL)などに分かれるのです。
カイロミクロンとVLDLが中性脂肪を運搬し、LDLが、LDLコレステロール、HDLがHDLコレステロールを運搬しています。LDLコレステロールは、肝臓から組織に運ばれるコレステロールで血管壁などに沈着しますので、悪玉コレステロールと呼ばれ、HDLコレステロールは逆に細胞から回収されて肝臓へ移動するコレステロールですので、善玉コレステロールと呼ばれています。
総コレステロールはこの悪玉と善玉を合計したものですから、コレステロールを問題にする場合、総コレステロールではなく、悪玉コレステロールと善玉コレステロールに分けて考えなければいけません。同じ総コレステロール値でも善玉と悪玉の割合が同じとは限らないからです。

動脈硬化の原因はコレステロール?

コレステロールの中でもLDLコレステロールそのものが、動脈硬化を引き起こすのではありません。血管壁などで、酸化したLDLコレステロールこそが動脈硬化の原因となります。体内で過剰になったコレステロールは細胞内に取り込まれずに、血液中や血管壁の間を出入りしながら浮遊する事になり、酸化物質の格好の餌食になります。そして過剰なコレステロールは酸化されやすくなります。LDLコレステロール自体が動脈硬化の原因なのではなく、酸化したLDLコレステロールが動脈硬化の原因となります。
LDLコレステロールは体内でコレステロールを運ぶ大切な役割を果たしているのですが、すべてのコレステロールが細胞に取り込まれるわけではなく、細胞にある受容体(LDLコレステロールの受け口)によって必要なコレステロールの分量が調節されています。この為、過剰になったコレステロールは細胞内に入れずに、血液中や血管壁の間を出入りしながら浮遊する事になるのです。こうして浮遊していてるLDLコレステロールは、活性酸素(体を錆び付かせる攻撃性の酸素・フリーラジカルの1種)によって酸化されると酸化LDLコレステロールとなり、動脈硬化の原因となってしまいます。

動脈硬化が起きるメカニズム

動脈の内壁をおおう内膜が、高血圧などのせいで傷つけられると、その傷に酸化したLDLコレステロールが浸み込んで、悪さをするようになります。通常であれば、体内の異物処理を担当するマクロファージに取り込まれるのですが、マクロファージは酸化されたLDLコレステロールを分解することができません。分解できない上に、マクロファージは酸化されたLDLコレステロールを、大量に食べ続けて、みずからの中にどんどんLDLコレステロールを溜め込んでしまうのです。そして飽和状態を迎えると泡のような形をした細胞(泡沫細胞)となって血管の内壁の中に蓄積してしまうことになります。泡沫細胞がたまると、血管の壁が盛り上がって、それが続くと破裂してしまい血管の壁に傷ができます。傷ができると血液中の血小板が修復しようとします。血小板の修復は切り傷をかさぶたが守るように血管壁にかたまりができるのです。こうしてできたかたまりにより血管の壁が盛り上がり、狭くなり、動脈硬化を引き起こし、血栓というかさぶたが詰まり、脳卒中心筋梗塞につながってしまいます。
泡沫細胞の蓄積で、血管壁に粥状のかたまり(粥種(じゅくしゅ)・アテローム)ができることを、アテローム性動脈硬化と呼ばれ、特に心臓や脳などの太い血管に起こりやすくなります。
動脈硬化をおこさないためにも、LDLコレステロールを増やさないのはもちろんのこと、LDLコレステロールを活性酸素等によって酸化させない事が動脈硬化を防ぐ、最大のポイントになるのです。

動脈硬化が起こす血栓について

血栓とは、血管を流れる血液が固まってできる、血液のかさぶたのようなものです。そして、それが血管に詰まってしまう状態を血栓症と言います。血栓は、人間の体になくてはならないもので本来悪者ではありません。傷などで出血しても、血栓のおかげでかさぶたができ、大量の血液を失わなくて済みます。それは、体内の破れてしまった血管なども同様になります。高コレステロールや高血圧が原因で動脈硬化を起こした血管は、管が狭くなり詰まりやすくなっています。そんな血管に血栓ができて、詰まってしまうと、そこから先にスムーズに血液が送られず、脳梗塞や心筋梗塞といった、死に至る恐ろしい病気を引き起こしてしまうのです。
一方人間の体には、不要な血栓を溶かすプラスミンという酵素が存在し、血液の循環をスムーズにしています。この血液の流れをスムーズにするプラスミンを作るのがtPAという酵素になります。tPAは組織プラスミノゲンアクチベーターの略で、プラスミノーゲンからプラスミンへの変換を担当する酵素になります。tPAは、血管の内皮細胞(血管内壁の表面の細胞)でつくられている酵素ですが、動脈硬化などで血管が弱まってしまうと、つくられるtPAの量が減って血栓を溶かしきれなくなります。溶かしきれなくなった上で動脈硬化が起こると血管自体も弱まって傷つきやすくなり、その傷を治そうとする力が働いて結果的に血が固まりやすくなります。このように動脈硬化による二重の作用で血栓ができやすくなります。ですので高脂血症や高血圧のせいで血管がボロボロになるということは、血栓が作られやすい、溶かされにくい環境になってしまっているということです。

HDLコレステロールが異常に多い長寿症候群

長寿症候群とは、遺伝的にHDLコレステロールが異常に多い人たちのことを言います。長寿症候群は寿命が平均よりも4年も長いといわれています。通常の健康な人のHDLコレステロールの値は40~80mg/dlといわれていますが、長寿症候群の人のHDLコレステロール値は100mg/dl以上あるといわれています。遺伝の影響ですので普通の人がHDLコレステロールを100mg/dlにするのは不可能です。ただし高HDL血症(100mg/dl以上)については、以前は長寿症候群といわれ動脈硬化になりにくく好ましいとされていましたが、高HDL血症の方の一部には、HDLコレステロールを肝臓に逆転送して代謝させるコレステリルエステル転送蛋白(CETP)の遺伝的な異常の場合があり、HDLコレステロールの質的異常が逆に動脈硬化を早めるというデータも出てきています。
善玉コレステロールが多いに越したことはありませんが、長寿症候群ではなくても悪玉のLDLコレステロールの量が少なければ、HDLコレステロールが少なくてもある程度の長寿は実現ができます。大切なのはLDLコレステロールとHDLコレステロールのバランスになります。
以下に簡単なバランスを見る指数、動脈硬化指数というのを出す計算式を記載しています。健康診断結果表を確認しながら計算してみてください。

動脈硬化指数=LDL/HDL=総コレステロール-HDL/HDL

正常値は1.9~3.04.0を超えると危険度が高いとされています。

女性の動脈硬化は50歳からが危険

女性の閉経後の狭心症や心筋梗塞・脳梗塞などの疾患の発現率は、なんと閉経前の約2倍にもなります。女性も若いうちからの中性脂肪・コレステロール対策がとても重要だといえます。女性ホルモンのエストロゲンは、肝臓の酵素に働きかけて血液中のLDLコレステロールが増えすぎないように抑え、しかも肝臓でのHDLコレステロールの合成を促してくれています。
女性特有の女性ホルモンには、ご存知の通りプロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の2つがあります。
プロゲステロンは主に妊娠の準備のために働くホルモンです。エストロゲンは生理がある間、豊富に分泌されるホルモンで、女性らしい体型を作るとともに、女性の体をさまざまな形で守る働きをしています。エストロゲンの第一の働きは、骨からのカルシウムの流出を調整して、骨を正常に保つ働きがあります。そして第二の働きは、コラーゲンの生成を促すことです。そしてもうひとつ一番大切な働きは、肝臓の酵素に働きかけて血液中のLDLコレステロールが増えすぎないように抑え、しかも肝臓でのHDLコレステロールの合成を促すことになります。
狭心症や心筋梗塞は男の病気のイメージがあると思います。女性は、このエストロゲンの働きで男性よりも動脈硬化性疾患の発現が15年~20年も遅れて起こるといわれています。女性の動脈は、生理のあるうちはエストロゲンの働きで、男性とは比べ物にならないほど若々しく、加齢による動脈硬化も軽くなります。ですが閉経すると、エストロゲンの分泌量が激減するため、LDLコレステロールや中性脂肪が男性よりも高くなっていくことになります。ですから女性は狭心症や心筋梗塞・脳梗塞という疾患にあまりかからないというイメージがあります。ですが閉経後では狭心症や心筋梗塞・脳梗塞疾患の発現率は、閉経前の約2倍にもなることがわかっています。女性も若いうちから、脂肪対策をしておくのが重要になります。

超悪玉コレステロール スモールデンスLDL・小型で比重が重いLDL

コレステロールの中でも注目を集めているのが超悪玉コレステロール(スモールデンスLDL・小型で比重が重いLDL)です。総コレステロール値やLDLコレステロール値の2つの値がそれほど高くなくても、超悪玉コレステロールの影響で心筋梗塞で突然死することがあります。総コレステロールはそれほど多くなくても、超悪玉コレステロールが多くなると、心筋梗塞になる確率が極端にあがり、30代、40代で突然死を招く原因になっています。健康診断や人間ドックの検査結果で、動脈硬化の指標として最も気になるのが、コレステロール値です。そして、心筋梗塞との関係で、注目を集めているのが超悪玉コレステロールなのです。心筋梗塞というと、総コレステロール値やLDLコレステロール値が高く、HDLコレステロール値が低いと考えるのが一般的ですが、必ずしもそうではなく総コレステロール値やLDLコレステロール値の2つの値がそれほど高くなくても、心筋梗塞で突然死することがあるのです。日本人では心筋梗塞を起こす人で総コレステロール値が高い人は、2割しかいないといわれています。ですが、LDLコレステロールに着目すると、粒子径が小さく比重が重い超悪玉コレステロールを多く持つパターンBと言われる人は、正常粒子径のLDLを多く持つパターンAの人より心筋梗塞発生率が3倍ほど高かったようです。そして、心筋梗塞発症例の7割以上が、超悪玉コレステロールが約半分以上のパターンBだったと報告する論文もあります。
LDLコレステロールの粒子径は、健康診断のできる総合病院で、精密検査として、測定する事ができます。気になる方は、LDLコレステロールの粒子径を測定してみましょう。

足の動脈硬化閉塞性動脈硬化症に注意

動脈硬化は心臓や脳だけではなく、実は足の動脈硬化への注意が必要です。閉塞性動脈硬化症とは足の動脈が動脈硬化のために狭くなったり閉塞して、足の筋肉への血流が減り、足が痛むなどの症状が出る病気です。この病気は早く治療をできるかどうかで、予後(治癒後の経過)は全く違ってくるといわれています。
足の血管に動脈硬化が起きた場合、閉塞性動脈硬化症と呼んでいます。足の動脈が動脈硬化のために狭くなったり閉塞して、足の筋肉への血流が減り、足が痛むなどの症状が出る病気です。片足のことが多いのですが、両足のこともあります。重症になると足の末端に血液が通わなくなり、足先が腐ってしまうこともあります。日本国内の推定患者数は約400万人ともいわれています。気づかないで放置していると、足が腐って切断を余儀なくされることもあるので、とても怖い病気になります。以下のような症状がある方は閉塞性動脈硬化症に注意しましょう。

閉塞性動脈硬化症により出てくる症状一覧

  1. 朝晩に手足の冷えを強く感じる
  2. 季節の変わり目に足の先がしびれる感じがする
  3. 寒くなるにつれて厚手の靴下が手放せない
  4. 歩くとふくらはぎが痛くなり、こむら返りもよく起こる。休むと回復する
  5. 以前は歩けたいつもの道が、最近は途中で足が痛んで歩けない
  6. じっとしていても、ふくらはぎや足先が痛む
  7. 夜寝ていても、足先がジンジンと痛む
  8. 靴ずれなど足にできた傷が治りにくい

症状から閉塞性動脈硬化症の進行度を分けると以下に分類されます。

I度 冷感やしびれ感 (1)~(3)
II度 間欠性跛行(はこう) (4)(5)
III度 安静時疼痛(とうつう) (6)(7)
IV度 足のかいようや壊死(えし) (8)

I度の冷感やしびれ感は、見逃されやすい症状です。(1)~(8)の症状が1つでもある人は、足の動脈硬化を疑って、早めに病院を受診した方が良いと思います。病院を受診し何もなければ安心できます。閉塞性動脈硬化症は早く治療開始できるかどうかで、予後(治癒後の経過)は全く違ってくるので症状をチェックして気になるようであれば病院を受診しましょう。心当たりがある人はかかりつけ医に相談するか病院の循環器内科や心臓血管外科を受診することをおすすめします。また糖尿病、高脂血症、高血圧など生活習慣病のある人も、足の動脈硬化がある可能性が高くなります。たとえ症状がなくても、年に一度程度は、足の症状も確認してみましょう。

動脈硬化を防ぐ一酸化窒素

一酸化窒素の健康効果は血管拡張作用です。また、一酸化窒素の血液をサラサラにする効果は、血液が固まるのを防ぐ作用があって、ドロドロ血をサラサラ血に変えるのことができます。
一酸化窒素が体の中に増えると、血管が広がり血圧が下がることが、さまざまな研究で明らかになっているのです。一酸化窒素の効果が動脈硬化のリスクを下げることにつながります。高塩分や高カロリーの食生活を送っている人、高血圧や肥満の人、喫煙者などは意識して一酸化窒素を増やした方が良いといわれています。

一酸化窒素を増やす方法

一酸化窒素を増やすポイントはやはり運動食事になります。まず運動ですが、とにかく体を動かすことが重要です。体を動かすと血液の流れがよくなります。すると血管内皮に摩擦が生じ、それによって一酸化窒素が発生するといわれています。運動はある程度負荷が強い方が一酸化窒素発生率は高くなりますが、運動負荷が高いと同時に活性酸素も過剰に生じて一酸化窒素の効果が打ち消されるともいわれています。ですから運動は軽い負荷の方が良いといわれています。ウォーキングなどがオススメですが、日常生活で、エレベーターではなく階段を使ったり、1駅歩いたりするなど日々可能な範囲できる軽い運動から始めてみましょう。
日常生活でできる運動であれば無理なく、毎日継続してできます。一酸化窒素は不安定な物質なので、一度増えてもそれを維持しにくいので継続的に一酸化窒素が体内に多い状態を保つなら、週3回よりも毎日の運動、朝だけよりも朝、昼、晩の運動というように、毎日継続的に回数を増やした方が効果的です。
次は食事ですが、アーモンド、ピーナツなどのナッツ類、ゴマ、玄米などで一酸化窒素の元であるアミノ酸の一種であるアルギニンになります。アルギニンを摂取すると、体内で一酸化窒素が発生します。アルギニンはナッツ類などから取れるので、これらの食品を積極的に取るのが良いとされています。
他におすすめなのがゴーヤです。ゴーヤを食べる前後に血液中の成分を調べたところ、食後に一酸化窒素が増えたという報告があります。ゴーヤに多いシトルリンという物質も一酸化窒素の材料になるのです。ゴーヤチャンプルーなどを定期的に食べると、一酸化窒素が多い状態を保つことができます。
気になる摂取量ですが、アルギニンなら1日2~3グラム程度がいいといわれています。摂取量を毎回チェックするのは難しいので、毎日1回一酸化窒素増やす食品を取るという程度で良いと思います。

コレステロールは少し高めの方が健康には良い

総コレステロール値が基準値の220を上回る240から260ほどで推移していてコレステロールを下げる薬も飲んでいなければ、食事制限もさほど厳密にしていないが、とても元気な高齢者がいます。コレステロールとは、細胞膜や性ホルモンの材料になる脂質です。過剰になると、血管が傷んで動脈硬化が進行し、心筋梗塞の原因になるとされています。日本動脈硬化学会は、現在のところ総コレステロール値220mg/dl以上で高コレステロール血症と診断するとしています。元気な高齢者は善玉コレステロールと言われるHDLコレステロール値も高めです。HDLは、動脈硬化を進める血液中の余分なコレステロールを回収する働きがあります。また、心臓の拍動が血管壁を伝わる速度を調べ、動脈硬化の進行度を測るPWV検査でも、年齢相応で問題ないという場合が多いといいます。多くの高齢者を診てきた経験豊かな医師は、高齢者の場合、基準値を少し上回るぐらいの方が、元気な人が多いとの実感を持っているといいます。現在の基準値には、研究者の間でも異論があるのです。60歳代を中心とした約3万人を対象に、総コレステロール値と死亡率の関係を調べた結果、最も死亡率が低いのは、総コレステロール値220~239の場合だったそうです。診断基準では高コレステロールですが、最も長生きが期待できる数値という研究結果だったのです。高齢者のコレステロールの値が高い傾向なのは、体がコレステロールを必要としているからとも考えられます。
コレステロールとがんの因果関係を追跡した調査によると、がんによる死亡は、コレステロール値160mg未満で最も多く、240mg以上で最も少なかったという結果でした。コレステロールは、細胞膜など生体膜の大切な構成成分ですので、総死亡率が上昇しているのは、コレステロール値が低いと、がんのリスクだけでなく感染症にもかかりやすくなっているとも判断することができます。
コレステロールは、体内のステロイドホルモンの原料でもあるので、コレステロール値が低いと免疫力が落ちストレスにも弱くなり、がんや感染症が増える結果になってしまいます。コレステロールは、肝臓で合成されるので肝臓がんの原因になるのではともいわれています。コレステロールは高すぎても低すぎても良くないこといえます。